食品医薬品安全庁(KFDA)によると、現在、韓国をはじめとする世界各国で許可されたES細胞治療剤は存在しないが、韓国、米国、欧州、日本などを中心に品目許可のための臨床試験は積極的に行なわれているという。
現在、臨床試験が行なわれている主要な対象疾患は、心血管疾患(心筋こうそく、心不全、 脳卒中等)、がん及び血液疾患(血液腫瘍、白血病、リンパ種等)、脳疾患(脳梗塞、アルツハイマー形痴ほう等)、痔ろう、退行性関節炎等である。※ES細胞種類及び臨床的応用分野 (添付1)
韓国国内では、現在に至るまで計19件(5社)の臨床試験が承認されているが、そのうち5件が完了しており、14件は進行中である。 種類別で見ると、自己骨髓ES細胞治療剤が3件、同種骨髓ES細胞治療剤が2件、同種さい帯血ES細胞治療剤が5件、自己脂肪ES細胞治療剤が9件である。※国内ES細胞治療剤臨床試験現況 (添付2)
世界的にES細胞治療剤臨床は商業化が急務である後期臨床試験の臨床、2床・3床の段階に27件があり、国別に見ると米国14件、スペイン4件、韓国3件、ドイツ3件、フランス2件となっている。※国外ES細胞治療剤臨床試験現況 (添付3)
世界のES細胞市場の規模は、2005年時点で69億ドル(約7兆)、年平均24.6%の成長率を見せており、2012年には324億ドル(約37兆) 規模で成長すると見込まれている。このうち、成体幹細胞が55.7%、胚芽幹細胞が15.7%、さい帯血ES細胞が28.6%を占めると予測されている。※出典:Research Impact Technologies, “Stem Cell Research-A Market Insight Report”(‘08.5)
2009年、米政府は胚芽幹細胞研究支援を許容し、2億ドル規模の支援計画を確立。EUは 8か国11研究機関が共同参加するES細胞研究プロジェクトを発足させた。日本は逆分化ES細胞等の再生医療研究に109億円の支援を実施する等、市場を先行獲得するための国家間の競争も激しくなってきている。韓国は、2009年に5部署(機材部、教科部、地境部、福祉部、 KFDA)が参加した国家科学技術委員会において、幹細胞研究のR&D投資を現在の年間400億ウォンから2015年には1,200億ウォンまで拡大するという積極的な支援政策を推進している。
最近になってKFDAが発表したところによると、国内外で申し立てが行なわれている自己由来ES細胞治療剤の臨床試験免除要求に関し、安全性と有効性の確認のための最小限の必須要件である臨床試験を兔除して許可することは難しい。
○シムゼチョル議員代表による発議(09.10月)
自己由来の細胞治療剤は、研究者臨床または臨床1床の終了後に2、3床は条件付き品目許可
○ビョンジェイル議員代表による発議(10.10月)
自己由来ES細胞治療剤は、3床免除。希少難治性疾患用の場合、研究者の臨床試験資料を根拠に臨床試験の一切を免除
これは、世界的に医薬品許可規定に臨床試験を兔除したケースがないこと、自己由来ES細胞治療剤と言っても体外での培養を経て大量に投与されるため安全性の問題が発生する可能性があること、ES細胞治療剤に対する研究がまだ初期段階であり、世界的に許可を受けた製品がない点等を考慮したものである。
KFDAが発表したところによると、安全で有効な治療剤を開発し、難治性患者等に医療特恵が提供されるよう、様々な専門家の意見を集め、細胞治療剤の特性を考慮した安全性・有效性審査評価基準を作成する計画だという。
その一方でKFDAは、臨床試験承認や許可を受けてないES細胞手術が特定業者を通じ、韓国国内で無分別に成り立っているという点に関しては、福祉部主管(KFDAの協助)のもと、全般的な実態調査を通じて対応策を用意する計画である。それと同時に「生命倫理及び安全に関する法律」で管理している胚芽幹細胞、「さい帯血管理及び研究に関する法律」で管理しているさい帯血ES細胞のように、成体幹細胞に対しても採取・培養・保管に関する適正な管理体系を用意する方案を主務部処である保健福祉部と協議する予定で。KFDAは、今後とも国民の健康を最優先事項とし、ES細胞治療剤の安全管理に万全を尽くすと述べた。
参考URL: KFDAニュース 2011.11.18
http://www.kfda.go.kr/index.kfda?mid=56&seq=13564