- 区分
- 医薬品
村山良介
日本大学歯学部保存学教室修復学講座
【著言】
近年,歯面の沈着物を除去する方 法のひとつとして,パウダーを噴射 することがおこなわれている.パウ ダーの粒子としては,主に重炭酸が 用いられてきたが,近年では糖アル コールやアミノ酸などの粒子が用い られるようになった 1,2) .歯面の着色 物の除去には,パウダー粒子を高速 で衝突させることによって生じる物 理的な効果が有効であるところか ら,パウダー粒子の大きさや性状に よってその除去効率に影響を及ぼす こととなる.
一方,臨床においては, CAD/CAM 冠による補綴処置の頻度が向上して いるが,これら CAD/CAM 冠における PMTC 後の表面性状に関する報告は少 ない.そこで,本研究では,各種パ ウダー粒子を CAD/CAM 冠に適用した ことを想定して,パウダー噴射後に おける CAD/CAM 冠の表面性状に関し て検討した.
【材料と方法】
パウダーとして用いたのは,粒径の 細かいものから①タガトース,②エリ スリトール,③グリシン,④炭酸水素 ナトリウムおよび⑤炭酸カルシウム の5種類である(表1).実験方法と しては,CAD/CAM 試料表面に各種エ アーポリッシングパウダーを噴射し, その表面のレーザー顕微鏡観察およ び表面粗さの計測を行った.
試料としては,CAD/CAM ブロック の表面を耐水性シリコンカーバイド ペーパー#1,200 を用いて研削したも のを用いた.パウダーの噴射器には Perio Mate(ナカニシ)を用い,噴射ノズ ルと CAD/CAM 表面の距離 2mm の条 件で行った.
【結果】
①レーザー顕微鏡による表面観察(図 1-5) 噴射前の CAD/CAM 表面は,レジン マトリックスと無機質フィラー表面 に凹凸は認められなかった.ノズル距 離 2mm 条件における噴射後の表面性 状は,レジンマトリックスが削れ,無 機質フィラーが露出している像を呈 した.その様相は,タガトース,エリ スリトールおよびグリシン(図. 1-3) では CAD/CAM レジンブロックのフ ィラー研磨面は残留し,レジンマトリ ックスは摩滅していた.炭酸水素ナ トリウムおよび炭酸カルシウム(図. 4- 5)では,フィラーが脱落し,レジンマ トリックスに含まれる球状フィラー が露出していた.
②表面荒さ
表面粗さ計測の結果は,噴射前の CAD/CAM ブロックで 0.294 であった のに対して,タガトース,エリスリト ールおよびグリシンがそれぞれ 0.294, 0.322,および 0.328 であった.また,炭 酸水素ナトリウムは 0.641 で, 炭酸カ ルシウムは 0.95 であった.
【考察】
レーザー顕微鏡による表面性状の 観察では,タガトース,エリスリトー ルおよびグリシンの順でフィラー研 磨面の残留が認められた.このことは, タガトースやエリスリトールのよう な糖をベースにした粉体あるいはグ リシンのようなアミノ酸粉体の場合, 密度が低く,CAD/CAM 表面に対する 衝突時の侵襲性が低いと考えられた.
表面粗さ計測に関しては,タガトー ス,エリスリトールおよびグリシンの 3種は低い値を示したが,前述したよ うに,CAD/CAM 表面に対する侵襲性 の低さを表すものと考えられた.炭酸 水素ナトリウムと炭酸カルシウムは CAD/CAM表面のレジンマトリックス の脱落が一部で認められたものの,口 腔内での応用に際しては,CAD/CAM表層への強固な着色に対して有効 であるものと考えられた.
【参考文献】
1) Müller N, Moëne R, Cancela JA, Mombelli A, Subgingival air-polishing with erythritol during periodontal maintenance, J Clin Periodontol 2014; 41(9) : 883-889.
2). Petersilka G, Faggion CM Jr., Stratmann U Gerss J, Ehmke B, Haeberlein I, Flemmig TF, Effect of glycine powder air-polishing on the gingiva, J Clin Periodontol20008; 35)4) 324-332.