昆虫に対して忌避活性をもつ植物精油には様々なものがあるが、最も有名なのがニーム(インドセンダン)である。ニームは数多くの昆虫に対して忌避活性・摂食阻害活性を発揮することが報告されており、主な活性要因としてはアザジラクチンという成分が同定されている。また、人をはじめとする哺乳類などに対する毒性が非常に低いことも、ニームが注目されている理由の一つである。
衛生害虫の代表格であるチャバネゴキブリに対しては、セロリやシナモン、クミンなどの抽出物やイヌハッカ由来の精油が高い忌避活性を有することが報告されている。同じく衛生害虫であるカには、ペパーミントやスギの精油などが忌避活性を示し、ダニに対してはエゾノヨモギギクやフウチョウソウ(アブラナ科)などが忌避活性を示すことが報告されている。さらに貯穀害虫に対しては、例えばカッシャオイルやシソオイルはタバコシバンムシに対して、バンレイシ科植物の種子粉末および抽出物や柑橘抽出物はカツオブシムシに対して、シソ科植物の抽出物はココクゾウムシやコクヌストモドキなどに、それぞれ忌避効果を有する旨の報告がなされている。
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